小津映画入門―『東京物語』を中心に― |
十年一昔と一口に言うけれども、小津安二郎がこの世を去ったのは、三昔以上前の1963年のこと。いっときは忘れられたかにみえた小津の映画が、1970年代から再び注目を集めるようになってきた。小津映画を再評価しようという動きは、日本でよりも外国の方が盛んである。映画『MISHIMA』を撮ったポール・シュレイダーや、『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』などの監督ヴィム・ヴェンダースは、小津映画に触発されて育った世代の映画作家だ。世界中の人々を魅せてやまない小津映画の魅力とは何なのかを、小津の代表作『東京物語』を中心にして探ってみよう。