昨夜、待望の『フィガロの結婚』を見てどっと疲れました。これまでに全く見たことのないタイプの上演でした。テンポが抑制されて、歌手はテンポとタイミングの取り方が難しそうでした。障害物競走で前につんのめるような感じ。このテンポにつきあうと聞いている方まで疲れてきます。
ドイツ的な様式美の上演という印象。あまりモーツァルトを聞いているという感じがしない。『ヴォツェック』を見ているような感じです。あの衣装は明らかに20世紀前半のものでしょう。この上演では村人たちだけでなく『制服の処女』のごとく女学生が制服を来て出てくる。これはちょっと面白い演出。
終演後の拍手は『椿姫』ほどの物凄い感動の嵐とはほど遠い…。意外に拍手が控えめ。スザンナ、フィガロ役よりもケルビーノ役のクリスティーネ・シェーファーへの拍手が一番大きかった、というのが意外。シェーファーはブーレーズの『月に憑かれたピエロ』を歌った人。名前を聞いて思い出しました。
前半は遅いテンポの異化作用。さんざん上演されて新味のなさそうな演目でこれだけ新たなことがやれる、ということが驚きです。満足度はかなり高い。ただ同時にかなり疲れる。話題の上演をテレビで見ることができて幸運でした。
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