21世紀に入り、ICT(情報通信技術)の急速な普及・発展と共に知の共有環境がドラスティックに変化しつつある。紙からネット媒体へ、書籍からタブレットやスマホへ。風穴などの画像データ、温度計測データ、歴史的背景を裏付ける古い資料なども蓄積しつつ公開することがいっそう容易になる。紙媒体での情報流通や共有には限界がある。手間もコストもかかる。メディア環境の変革は紙媒体依存から脱却するよい機会である。
今回で第3回を迎える全国風穴サミットは、全国各地域の研究者や風穴愛好家などがお互いに分け隔てなく集うナレッジコモンズ(知識を共有する場)と見ることができる。これに風穴を愛好・研究する市民の活動などが交わってさらに地域や分野ごとにも分散的なナレッジコモンズが形成されつつある。
「全国/地域風穴アーカイブ」は、全国風穴サミットを機会に広がりつつある地域・個人の発信の気運に応えられるよう、全国各地の有志が地元のデータを出し合い、ネット上の情報空間をデジタルコモンズ(知識がデジタル化されて共有する場)とする提案である。
アーカイブと調査研究は重なるが同じではない。データや資料を渉猟し、探求した真実を言語化・普遍化するのが調査研究とすれば、アーカイブは調査研究の成果も含め、調査研究の源泉となるデータや資料そのものをデジタルコモンズに蓄積し誰もが参照できる1次データとして提供するものである。皆でデータを出し合い、データに直接接することができるようにすることにより、これまで地元の限られた人にしかわからなかった各地域の風穴の一つ一つが誰にとっても手に取るようによくわかるようになる。全国に数多く遍在する個別の風穴がこれまで以上に「面白い」ものに感じられるようにすること、学術研究や学際的・分野横断的な取り組みが進展していくことを期待するものである。
|