冬の行事
旧暦十一月は冬です。「ダイス講」は大師講とされますが、清音では太子講となります。大師は弘法大師、太子は聖徳太子などといわれますが元は同じであったともいわれます。広く全国にみられ、大師様は一本足であるとか、足の指がないとかいわれ、足跡を隠すため雪を降らせるのだとの言い伝えも残っています。「川浸りのツイタチ」は水神祭りです。正月を迎え火を使う機会が多くなることから、防火の願いからおこったものと考えられています。「鉦勧進」は鉦打ちとも鉦たたきともいわれ、十二月八日の本道寺湯殿山神社祭礼のお使いの挨拶がわりに行われています。以前は六日、夜中の12時過ぎから本道寺・月岡の集落を一軒一軒まわりました。各家々では門口で待ち受け、頭を垂れて鉦の音を聞きました。家によっては鉦(金)が入るということで、中に招き入れ御馳走したといいます。現在も二つの鉦を五・六人が交互で叩き、本道寺・月岡・横岫地区をまわっています。十二月九日の「大黒様の耳あけ」は八日の所もあります。正月を迎えるにあたり福を呼ぼうとした行事と考えられます。
《十一月》 三日:ダイス(大師)講
南瓜バット(はっとう)を大師様に供える。月山沢、砂子関では団子を供える。「ダイス講荒れ」といって冬の前ぶれの悪天候の季節がやってくるのである。
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十三日:中のダイス講
神様にボタ餅か赤飯を供える。月山沢、砂子関では、「中のダイスに団子つくるな」といわれ、団子は供えない。
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十五日:若勢の出替り
二十三日:終わりダイス講
餅をつく。おダイス様は質素倹約の神様で、餅に塩を添えて供えた。
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二十三日:ダイスコ荒れ(月山沢、砂子関は二十四日)
ダイスコの足跡隠しといわれる吹雪がこの頃から吹く。
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二十三日頃(新暦でいう冬至):冬至南瓜(あずきかぼちゃ)
「冬至南瓜を三軒も食べ歩くとふくすく(裕福に)なる」「冬至が過ぎると南瓜が腐れる」との言い伝えがある。
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《十二月》 一日:川浸りのツイタチ
水神様を祀る。「川浸り餅を食わぬ内は川越しするな」の諺がある。
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一日:お八日登り
湯殿山の年取り。大井沢の湯殿山神社(元大日寺)に一日から八日まで山先達がこもる。一般の村人は七日夜、または八日朝のみ参拝する。
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六日:鉦勧進(本道寺)
湯殿山神社の例祭の案内触れを兼ね、鉦を打ち鳴らしその年の金入れを祈って家々を廻って歩く。
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七日:お八日登り
近年は略して、七日夜におこもり礼拝、八日朝に礼拝して直会(なおらい)する。供えた二重ねの丸餅を雑煮にする。「供え餅が凍みて割れにくいような年は作が良い」といわれた。
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八日:お八日
湯殿山のご縁日。神社から村内へ「お八日こもり」の祈祷札が配られる。 砂子関では、小砂子関をのぞく全戸がお八日講にはいっており、新暦の毎月八日、月まわり宿に集まって湯殿山大権現と書いた掛け軸をかけ、お念仏を唱え(昔は般若心経をあげた)拍手を打っておまいりしているが、とくに十二月八日は師走八日と呼び、一年総まとめの湯殿山大権現のおまつりと称して盛大に行う。
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九日:まっかん大根 大黒様の耳あけ 聞かず大黒
夕方大黒様へ尾頭付きの魚、鱒(鮭)、まっかん大根(二股大根)、豆づくし四十八品料理を供える。桝に炒り豆と銭七厘を入れて振り鳴らしながら、「お大黒さまお大黒さま悪いごど聞かせねでええ耳聞かせでけらっしゃえ」と三回唱える。あとで供物をさげて夕食に食べる。 大黒様に供えた一升桝をおろして家族中で炒り豆を食べ、また月山沢や砂子関では、この日の夕食は豆づくしで、ご飯にもお汁にも豆を入れおかずもすべて豆料理である。海味では、お供えした大根は一月十二日の山の神の日に大根おろしにして食べた。
きかず大黒 旧十一月九日 きかず大黒(だえこく)さま まっかん(股付) 大根(だえご)で 耳あけて 豆あがて 来年(らえねん)も良耳(ええみみ)聞かせて 呉(く)なはれ カラ、カラ、カラ
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十二日:山の神の年取り
餅をついて山の仕事は休み、山の神にお詣りする。「山の神が木を数えて歩く日」であるから山には一切入らぬこと。また田の神であったので餅を数えているともいわれる。
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二十四日:地蔵様の年取り
二十四〜二十五日:納豆ねせ
正月用の納豆をねせる。「納豆の糸がよく出るときはいい事がある」「悪いこと(病気をしたり死人が出たりするような)があるときは糸が出ない」などという。
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二十六〜二十七日:すす掃き
二十五〜二十八日:ツメの市
正月用の買い物をする。徒歩の時代は左沢にも行った。
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二十八日:餅つき
お飾り餅・きんちゃく餅・草餅・栗餅・わたいれ餅・力餅などをついた。 きんちゃく餅は、直径20cm〜25cmの丸いのし餅をつくり、これを二つ折りにして餅切り縄をはさみ、縄の両端を結んできんちゃくの形にしたもの。
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二十八日:松迎え
このころの吉日に三階または五階葉の芯松をアキの方(恵方)から切って来る(五本〜七本と奇数)。歳徳神は松の木が立っている処を目印に降臨するという。
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大晦日:松飾り
松立て。夕方までに門松、座敷にミタマ松を飾り立てる。
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大晦日:ノサ(幣)飾り
大晦日:しめ縄
大晦日:オミダマ(年神の年越し膳)
カヤの箸(砂子関ではくるみの木)を立てた握り飯12個(閏年は13個)を、蚕のワラダに昆布・ゼンマイを添えて並べ、大根をローソク台にして灯りをともし、神前(砂子関ではアキの方)に供えて夕食前に一同お詣りする。
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大晦日:年越し膳
膳の一つを土蔵の神へ供える。飯・納豆・豆腐などの精進料理で家族も年越し膳につく。餅をつき、雑煮や小豆、納豆などで食べる。
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大晦日:年越し根っこ
昔は、大晦日には炉火を絶やさず焚き続けなければならないとする家が多く、この夜のために大きな木の根株を用意しておいた。
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