バイオリニストの前橋汀子さんは、私が大学生の時にはすでに著名でした。その頃(約30年前?)、仮に30歳とすると、今は60歳…。単純計算でもそうなります。容姿の美しい人は年輪を重ねても美しく、年齢不詳の印象でした。私よりもずっと高齢の方が、「私が若い頃から知っている人なのに、いったいおいくつなんでしょうね」と、まるで同じことを口にしていました。やはり異口同音、誰も同じことを思うらしいです。
1980年代の前半、ローラ・ボベスコのリサイタルを聞いたことがあります。あの頃のボベスコと現在の前橋さんがほぼ同じぐらいの年齢です。既に大御所の域に入ったといっても過言ではありません。
演奏はなかなかに凄みのあるものでした。バッハの無伴奏パルティータは得意にしているらしい。バイオリンの曲はピアノ伴奏のバイオリンソナタを聴くことが多く、無伴奏でバイオリンのみを聴くというのは、ふだんでも滅多にない経験です。気丈さが演奏の気品となってぐいぐい響いてきました。初めて聴く前橋さんのバイオリンを満喫しました。よかった!
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