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我等の生涯の最良の年

カテゴリ: おすすめレビュー(映画など) 地域: どこか
(登録日: 2006/06/17 更新日: 2024/09/30)


1946/2003
ウィリアム・ワイラー
フレデリック・マーチ, フレデリック・マーチ, テレサ・ライト

この「おすすめレビュー」は、mixiの「おすすめレビュー」(DVD)に投稿したものです。
 

おすすめレビュー


この映画は私が生涯に見た映画の中でも最良の映画の一本。どうしてこんなにいいんだろう、この映画。しかも何度でも観たくなります。渋いのに飽きがきません。

最初、この映画を観たのは高校生の時。1970年代の中頃。当時、深夜の0:30から90分枠で映画を放送する番組がありました。確かフジテレビ。この映画は前編、後編に分けてやった。その後、アメリカの市販ビデオを買いました。久々にみたもののやはりいい。

この映画はアンドレ・バザンが『映画とは何か』で「空間的深さ」を使ったウィリアム・ワイラーの演出に言及し、その点でもマーキングすべき映画となっています。デパートの手前の文字もずっと背後の文字もピンボケすることなく、しっかりと読み取れる。グレッグ・トーランドの撮影の凄いことは言うまでもないわけですが、バザンが神がかったようにこの映画にことさらに思い入れするものですから、ただ事ではなくなってしまった映画。

確かに語るべき場面が5つや6つどころではない数があって、ちょっとここで逐一挙げ切れません。『ゲームの規則』(1939、ジャン・ルノワール)、『市民ケーン』(1941、オーソン・ウェルズ)、『偽りの花園』(1941、ワイラー)、『元禄忠臣蔵』(1941、溝口健二)など、この時期に「空間的深さ」を使った映画の傑作が相次ぎましたが、極めつけはこの映画『我等の生涯の最良の年』(1946)です。実にさりげなく撮っているように見えてしまう巧みさ! 『市民ケーン』のようにいかにもやっています。どうだ凄いだろう、のような臭さが皆無。このさりげなさ。この大人の映画作りの粋なこと。ワイラー&トーランドはこの一作で人類最高の文化遺産を残した、といっても過言ではないぐらいです。

この映画のヒューマニズムも当時のアメリカ映画にしては嫌味でなく、自然に受け入れられる。アメリカ映画が市井の市民の生活を描く、という視線・感覚を持ちえた映画という点でも愛すべき映画、という感情がわいてきます。やはりまた見てみたい。
 
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