カテゴリ: 記事「低予算で効果を上げる真の地域情報化」 地域: どこか (登録日: 2004/10/12 更新日: 2017/07/18)
従来の事業は予算ありきで発想してきたと言えます。予算が削られるようになり、何が本当に大切かを見直さざるを得なくなってきました。こと情報に関して言えば、情報の生産を促し、これを支援するPushCornのようなシステムは対投資効果が高いと言えます。これに対し、コンテンツ制作代行は予算を消耗する元凶となります。 生涯学習グループが自らの地域の学習を進めながら、協働で情報を発信していくと地域のコンテンツが形成されていきます。制作代行されたコンテンツの成長はあり得ません。住民が情報発信能力を高め、学習グループの中で相互に啓発しあえると持続的な地域コンテンツづくりの担い手となることができます。学習活動が絶えずコンテンツという外在化されたものとなり、他者からその成果が見えやすくなります。このことは学習者自身の励みになります。 ボランティア活動などの地域活動の中でも幅広く同じ方法が応用できます。PushCornのような道具立てがあると、ITが得意か不得意かにかかわらず、情報発信者の裾野を広げていくことができることを先の二例が証しています。 こうした地域活動でのIT活用が広がっていくと、IT講習は自ずとその活動で代替できるようになり、住民の主体的・自発的活動にもつながる、という好循環がもたらされます。 現状では、住民が集って地域活動をするのに必要な拠点がないことが課題となります。こうした目的で公民館を住民のサロンとして開放していくと、活動を生み出しやすくなり、片隅で使われないパソコンを活かせるようになります。 先の二例では、市民参加型ネット「やまがたネット」が重要な役割を果たしています。取り組みを成功に導くため、代表の堀さんがアドバイザリーに関わりました。また、住民が自らのサイトを持ったり、地域のアーカイブを構築して運営するためにはサーバが欠かせません。動画などを大量に蓄積するためには大容量のハードディスクも必要となります。こうしたサービスの維持管理には当然のことながらコストが発生します。サーバ導入などの初期コスト、年間の回線使用料などの経常コストを行政側が負担できると、住民のコスト負担も軽減され、住民がより参加しやすい環境づくりとなります。住民参加のサーバを行政のネットワーク内で運用することはセキュリティその他の理由からどの自治体においても限界があるものと思われます。その点、地域情報を地域住民が担うことができれば、行政ではできない地域情報化の推進に寄与することができます。利用者数が増加すれば、会費のみで自立運用することにも道を開くことができます。
以上のような展開を社会教育事業費でまかなうには限界があります。さらに局所的な取り組みは効果も総じて低くなります。首長部局の情報化推進施策と位置づけ、社会教育に限らず、福祉、医療、環境、各産業、学校教育、災害など多方面に渡る情報化施策として敷衍することにより、「空中戦」では実現が困難であった真の地域情報化を住民参加で推進していくことができます。 地域住民が生涯学習や地域活動でIT活用を楽しみ、行政がその支援役となったり、行政の仕事として一緒に地域活動を楽しむという地域社会のありようが真の地域情報化、まさに「地上戦」に思えてなりません。 私の研究室でも、そういった楽しい「地上戦」活動に踏み出したいという自治体さんにはPushCornでその実現を後押ししたいと考えています。
東北芸術工科大学・メディア環境研究室(前川道博研究室)〒990-9530山形県山形市上桜田200email:maekawa@mmdb.nethttp://www.mmdb.net/mlab/maekawa/eポートフォリオ学習支援ツール「PushCorn」http://www.mmdb.net/pushcorn/市民参加型ネット「やまがたネット」http://www.yamagata-net.jp/