かつては出羽三山の信仰が華やかな時代、源内さんはここで、戸沢候(庄内新庄の殿様)の三山参詣の道案内や物資の運搬をしていた。小雨しぶる七月頃の或る日、親子猿の子だけが雨季の増水した川の中州にとり残されて困っている様であった。源内さんは、直ぐに川岸にある大きな木を切り倒して橋を架けて、親子の猿の危難を無事に救ってやった。そんな事もいつか忘れかけたある夜、源内さんは庚申様の夢を見た。「増水の為に危険にされされていた親子猿を救ってくれた行動は誠に奇特な事である。その恩返しとして、そなたの家が代々小遣銭が不自由しないように、贈り物をするが、内容については家の当主以外には絶対に口外しないように。又、秘物は諸病に悩む人々に暴利を得ず、分かち与えるように。」と、その夜はそれだけで終わった。数日後、人の姿に化身した庚申様が源内さん宅を訪ねて「猿の壷」なるものを置いていった。早速、源内さんがこの壷を開いて、庚申秘法による猿酒の製法を会得し、これを広く世間一般に分かち与えた処、いつの間にか三山行者にも自然に宣伝され、この不思議な猿酒を買い求める人々でいつも門前が賑わっていたといわれます。荒木家では庚申塔を建て、大切に供養していたといわれます。
表面 明和七庚寅天 阿部佐平 同・三九郎 同・清次郎 庚 申 塔 同・治三郎 同・長作 同・・・・ 九月吉祥日 荒木定七
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