江戸の町 江川太郎左衛門屋敷跡 9
江川太郎左衛門は、伊豆韮山を本拠地とした幕府の世襲代官で、太郎左衛門とは江川家の代々の当主の通称です。なかでも有名だったのが、三十六代の江川英龍(一八〇一〜五五)です。 英龍は、洋学、とりわけ近代的な沿岸防備に強い関心を寄せました。我国に西洋砲術を取り入れ、韮山に反射炉を築いて、江戸防御のため江戸湾内の数ヶ所に砲台(お台場)を造りました。また、日本で初めてパンを焼いた人物だともいわれています。 この屋敷は代官の役所も兼ねていて、英龍は、土佐国中濱村の漁師で、嵐で遭難し、米国の捕鯨船に救われ、ほぼ一〇年振りに帰国した中濱萬次郎を敷地内の長屋に住まわせ、英語を講義させたといわれています。
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