現在の昌平橋が竣工したのが1928年です。関東大震災の後、帝都復興の一環で昌平橋が再建されたことを知りました。昌平橋は江戸城の外堀に架けられています。最近、再開発が行われた万世橋駅のレンガ造りの高架線が外堀沿いに延びています。現在の中央本線の線路はこのレンガ造りの高架線が現役で使われています。その一方、より高い高架線が外堀の反対側を通っています。これは総武本線の線路です。重層的な空間ながら、場当たり的に形成された印象は拭えません。お世辞にも美しいとは言いかねます。こういう見苦しい景観を次世代に向けてはぜひとも美しいものにし、誇りあるものに感じられるよう景観の改善を期待したいものです。
やや褒めるべきは石造りの昌平橋には歴史的風格があることでしょうか。帝都のステータスを表す建造物として橋に力を入れたことがわかります。建造後90年近く経って、帝都復興の記憶を現代に伝えるメモリアルにもなっているのではないでしょうか。しかしながら、昌平橋の歴史的風格が景観全体の雑駁さの中で埋没し、美しさや品格として感じられなくなっています。二度と訪れたいという感情は私の中には湧いてきませんでした。
そう言えば、ここは外堀ではありますが、めずらしく川筋の上を首都高速が通っていません。この周辺の首都高速は内堀側の方を通しているため、この周辺が高速道路の高架道まで通すことを免れたと見るほうが当たっているかもしれません。その分いくらかは救われたという印象です。
<参考資料> 『上田市誌第10巻 歴史編(7)城下町上田』、上田市誌編さん委員会、2002年 上田藩江戸藩邸については「第四章 武士たちの生活」「第四節 江戸藩邸の役割と藩士の生活」(134〜136頁)に解説があります。
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