関東大震災の後、首都復興で建設された建築物を「関東大震災復興遺産」と呼んでみることにしませんか。常盤橋もその一つです。
日本の宿命は地震・津波・火山の直接的な影響を受けること。日本列島は環太平洋火山帯に位置し、さらには複数のプレートが交差しあう位置の真上に位置しています。大災害は日本の宿命です。その首都が東京です。世界的にも稀有な地震災害から首都をいかに復興させたかは現存する建築物からうかがい知ることができます。
東京の都心をまちあるきして気づくことは、関東大震災後に建設された建築物が多く、それが80〜90年の時間を経過して歴史遺産化しつつあることです。常盤橋にもそれを見ることができます。橋には「昭和元年拾弐月完成」と刻まれています。昭和元年は1週間ほどしか期間がなかったわけで、ここに昭和元年と刻まれたのは極めて希少性が高い。時代が大正から昭和に変わった直後に完成したという点でもメモリアルな橋です。
この橋は見るからに石造ではなくコンクリート造です。震災直後に架けられた橋ですから、耐震性に重点が置かれて建設されたことがわかります。ちなみに古い常盤橋は「常磐橋」という一字違いの橋として現存しています。橋には「常盤橋」と刻まれていますが、「新常盤橋」とも呼ばれているようです。
この橋が大震災に耐えるのかどうかは80数年経過しながら未だに証明されていません。「美観」に優れているとはお世辞にも言い難い。ただし大震災がなく経過すれば80数年経過しても、さらには戦後の交通量の増大にもかかわらず耐えていることはその耐久性を証明しているのかもしれません。不可避的に訪れることが確実な次の大震災にも耐えてもらいたいものです。
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