『風と共に去りぬ』の映画音楽の深さに触れるきっかけになったのはオリジナルサウンドトラックスコアによる映画音楽のレコード。買ったのは高校生の時です。その時にマックス・スタイナーという作曲家を意識するようになりました。スタイナーはマーラーに直接師事しており、名付け親はリヒャルト・シュトラウスだと言います。ヨーロッパの音楽の中心地オーストリアで後期ロマン派の巨匠たちに囲まれて育ち、作曲を身に付けたところにハリウッド映画音楽の明らかな源泉があります。
『風と共に去りぬ』の音楽と言えば、「タラのテーマ」が有名です。これは主人公スカーレットが生まれ育った土地タラをライトモチーフとしたものです。この映画では他に、スカーレット、レット・バトラー、メラニー、アシュレーといった登場人物ごとのライトモチーフがあります。その他、「ディキシー」、フォスターの曲など当時の米国南部や時代背景となる音楽が多数織り込まれています。映画のメインタイトル以降、園遊会の開戦を知らせるニュースが届く直前の場面まで、延々とライトモチーフが絡まる音楽の展開が続きます。冒頭部のシークエンスは圧巻です。映画の後半、スカーレットとバトラー夫妻のドラマが展開していく過程は、音楽が2人の内面、感情の動きを表すようなかなり重厚な劇音楽が展開します。ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』の愛の二重唱を彷彿とさせるような印象です。
ワーグナーは映画というメディアを知ることなく没したわけですが、『風と共に去りぬ』を見ていると、まるでそこにワーグナーが生きて現れて作曲を指示したのではないかと思わせるような妄想すら抱きます。
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