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ミッチーのほぼ日記

『風と共に去りぬ』と『嵐が丘』の音楽

カテゴリ: 映画作品解説
(登録日: 2013/01/27 更新日: 2024/02/22)


☆Wikipedia:風と共に去りぬ(1939) Gone with the Wind
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2...%94%BB)

☆Wikipedia:嵐が丘(1939)Wuthering Heights
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B5...%94%BB)
この記事は、「おらほねっと/ミッチーのほぼ日記」から転載したものです。
http://sns.orahonet.jp/blog/blog.php?key=12573(2013/01/27)
 

ワーグナーの影響:ライトモチーフ


NHKの番組「schola 坂本龍一 音楽の学校」の今回のシリーズは映画音楽がテーマです。
http://www.nhk.or.jp/schola/

ヨーロッパ音楽、特にワーグナーと映画音楽との関係はかねてから調べてみたいと思っていた関心事でもあったので興味深く見ました。ただし短い番組の中での採り上げ方はあまりにもあっさりとし過ぎていて欲求不満。

私は映画は文化を体現し、かつインターテクスチュアルなものであると捉えています。文化的事象が表現に濃密に現れ、かつ、文化の織物のようになるという意味です。映画音楽においては特にそれが顕著です。

映画音楽に顕著なワーグナーの影響はライトモチーフです。全編がライトモチーフで作曲された『風と共に去りぬ』はワーグナーの影響が最も顕著な映画音楽と言えます。昨日は映画『風と共に去りぬ』(1939年、ヴィクター・フレミング監督)と『嵐が丘』(1939年、ウィリアム・ワイラー監督)の2本をDVDで流し見しながら、映画音楽がどのように展開しているかを聴いてみました。映画音楽に着目して映画を見るというのは、意外に面白いものです。
 

『風と共に去りぬ』の音楽


『風と共に去りぬ』の映画音楽の深さに触れるきっかけになったのはオリジナルサウンドトラックスコアによる映画音楽のレコード。買ったのは高校生の時です。その時にマックス・スタイナーという作曲家を意識するようになりました。スタイナーはマーラーに直接師事しており、名付け親はリヒャルト・シュトラウスだと言います。ヨーロッパの音楽の中心地オーストリアで後期ロマン派の巨匠たちに囲まれて育ち、作曲を身に付けたところにハリウッド映画音楽の明らかな源泉があります。

『風と共に去りぬ』の音楽と言えば、「タラのテーマ」が有名です。これは主人公スカーレットが生まれ育った土地タラをライトモチーフとしたものです。この映画では他に、スカーレット、レット・バトラー、メラニー、アシュレーといった登場人物ごとのライトモチーフがあります。その他、「ディキシー」、フォスターの曲など当時の米国南部や時代背景となる音楽が多数織り込まれています。映画のメインタイトル以降、園遊会の開戦を知らせるニュースが届く直前の場面まで、延々とライトモチーフが絡まる音楽の展開が続きます。冒頭部のシークエンスは圧巻です。映画の後半、スカーレットとバトラー夫妻のドラマが展開していく過程は、音楽が2人の内面、感情の動きを表すようなかなり重厚な劇音楽が展開します。ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』の愛の二重唱を彷彿とさせるような印象です。

ワーグナーは映画というメディアを知ることなく没したわけですが、『風と共に去りぬ』を見ていると、まるでそこにワーグナーが生きて現れて作曲を指示したのではないかと思わせるような妄想すら抱きます。
 

『嵐が丘』の音楽


映画『嵐が丘』について言うと、主人公ヒースクリフを演じるローレンス・オリヴィエが実にいい。撮影が特に素晴らしく、名カメラマングレッグ・トーランドの映像に引き入れられます。映画館で見たときには深い感銘を受けました。ただしDVDの画質はあまりに粗悪で、初めての人が見たらそんな名作とは感じられないかもしれません。

『嵐が丘』は言うまでもなくヒースクリフとキャシーの熱烈な恋愛の物語。全編に渡って繰り返されるのがキャシーのテーマです。このライトモチーフがこの映画のメインテーマのようになっています。それぞれの場面でかなりの程度、変奏され続けます。じっくりとよく分析するとライトモチーフの意味づけが特定できそうです。私なりにライトモチーフをネーミングしてみると、キャシーのテーマの他、運命のテーマ、回想のテーマというものがあります。その他は何度か見直してみるとさらに聞き分けられそうです。
 

2本の映画をめぐる逸話


『風と共に去りぬ』と『嵐が丘』には実は面白い逸話があります。『風』は主人公スカーレット役の女優が決まらないままクランクインしてしまったのだと言います。その撮影現場に訪れたヴィヴィアン・リーは、『嵐が丘』に出演するために渡米した恋人のオリヴィエを追ってたまたま『風』の現場に居合わせたところをプロデューサーのセルズニックにスカウトされたのだと言います。こういうメイキングオブのような伝説もハリウッド映画らしい物語です。
 
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