「ガリ版刷り」、ある世代の方には懐かしい響きの言葉かもしれません。コピー機やワープロが普及する以前、ガリ版刷りは自らの情報を記録し人に伝えるための、おそらくは唯一の、そして安価な手段でした。長年に渡り民話の調査をしてこられた武田正さんの記録がガリ版刷りの資料として残されています。これらの資料の一部はその後出版され、あるいは民話研究書執筆の資料として参照されることにより、日本の民話研究に大きな力を発揮してきました。残念ながら、かつて数多く制作されたガリ版刷りの資料が図書館に収蔵されることは殆どなく、どのようなガリ版刷りの資料があったのか、またそれらがどこに残っているのかはわからなくなってしまいました。先人たちの知識の集積ともいえるこれらの資料を私たちが共有できないことが、文化的遺産の継承、地域文化の研究の大きな妨げになっています。私たちは、ガリ版の原資料をできるだけ忠実にこのサイトにデジタル画像として収録しました。これらの貴重な資料をインターネットを通して、数多くの皆さんに伝承できることは、情報コーディネーターの私たちにとっては大変に思い意味があると考えています。原資料に数多くの人々が触れることができることが、これからの時代では文化の伝承・知識の共有という大きな可能性を拓くことになるからです。 ガリ版の手書き文字、紙の黄ばみからは、不思議なほどに研究当時の状況、制作者の思い・個性などが伝わってきます。歳月が経過したワラ半紙の独特な香りを皆さんにお伝えできないのが残念です。
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