ワーグナー『ローエングリン』1979バイロイト版
カテゴリ: 演奏・音源セレクション 地域: どこか
(登録日: 2025/06/25 更新日: 2025/06/25)
Richard Wagner • Lohengrin (Bayreuther Festspiele 1982, komplette Aufführung) (YouTube/Bernd Weikl (Kammersänger)チャンネル)を埋め込みコードにより参照
ワーグナーのオペラ・楽劇の全曲を初めて聞いたのは1979年の年末、NHK FMで放送されたバイロイト音楽祭、その中でもその年に初演された『ローエングリン』でした。その後、数年経ってその時の上演はNHKテレビで放送され、感銘を受けました。
カラン・アームストロング演じるエルザのおどおどした感じが実にいい。さらに白鳥の騎士ローエングリンを演じるペーター・ホフマンのカッコいいこと。あれから40年以上が経過したにもかかわらず、この時の『ローエングリン』を上回る上演がないようです。一般にはペーター・ホフマンがカッコよすぎて、その後のローエングリンはペーター・ホフマン・シンドロームと呼ばれるほど。私自身もローエングリン渇望症に陥っています。たまたま偶然にもそのような「伝説的」な上演を初めてFMで聴き、テレビでも観ることができた巡り合わせの幸運を感じます。
『ローエングリン』の中でも特に印象深いのが、ローエングリンが登場する場面。ゲッツ・フリードリヒのこの演出はその場面が絶品です。濡れ衣を着せられおどおどしながら騎士の登場を祈るエルザの背後に、きらきらと輝く月が現れ、波打ち際の鈍い筋状の灯りを演出しています。月の前にローエングリンがシルエットで姿を現します。数多くの『ローエングリン』をYouTubeでも観ることができますが、この場面がこれほど崇高に、美しく描かれた例を他に知りません。
この『ローエングリン』は第1幕への前奏曲から始まり、大団円まで陶酔しきりでした。一生に二度と出会えない素晴らしい上演にこうやって接することができた幸せを感じます。
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