本書の企画は1993年頃ではなかったかと記憶しています。当時は東北芸術工科大学に在籍していました。デジタル系メディアを専門としており、折りしも社会全体がインターネットに急速にシフトし、それまで続けてきた映画研究に十分に時間が割けなくなるというジレンマの中、韓国で買い込んできた数十本の韓国映画を鑑賞し、映画史執筆に活かしました。映画を楽しむというよりは見ること自体が拷問に近いものでした。映画はやはり楽しく見たいものです。
出版された1995年12月は、シネマトグラフ=リュミエールが誕生してから映画100年という記念すべき節目に当たり、東北芸術工科大学の「山形Net-Expoプロジェクト」で「映画100年ホームページ(Centennial of Cinema)」を開設し、その中に本書のウェブ版『アジア映画小事典』を併設しました。このサイト公開は、本まるごと一冊のウェブパブリッシングという社会的実験と位置づけられます。原稿執筆ばかりでなく、その取り組み自体がメモリアルなものでした。
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