蚕糸業が古くから盛んだった地域の一つが福島県の信達(しんだつ=信夫+伊達)地方です。近代になり、蚕糸業の中心都市のいくつかは蚕都と呼ばれました。糸都、織都、桑都など蚕都とは異なる呼ばれ方がされた都市もあります。蚕都は少なくとも6都市あります。梁川、熊谷、上田、八尾、豊橋、綾部。蚕都の一つ、信達地方の蚕糸業の中心地・梁川を訪れてみました。
「信達地方の蚕糸業」という言い方もされます。伊達郡は伊達氏発祥の地としても知られています。江戸時代の途中から天領となり、伊達の蚕種は1774年、幕府から「奥州蚕種本場」の称号を得たと言います。江戸時代の蚕種は伊達の蚕種が圧倒的なシェアを誇り、近現代、器械製糸によって上州や信州などが台頭するまでは蚕糸業の中心地であり続けました。
梁川は平成の大合併で伊達郡の5町と合併し現在は伊達市梁川町となっています。梁川には蚕都の遺産群はほとんど残っていないとは聞いていました。が、行ってみてびっくり、というのが正直な感想です。
あらかじめ目星を付けて訪れた場所は <伊達郡桑折町> ★旧伊達郡役所 ★奥州街道・羽州街道追分 <伊達市> ★伊達市保原歴史文化資料館 ★旧亀岡家住宅 ★梁川美術館(閉館中) ★産業伝承館(希望の森公園内、レストラン?、閉館中) ★梁川城跡 ★梁川八幡神社 などです。
思わぬ収穫だったのが ★泉原養蚕展示室 です。伊達市保原歴史文化資料館の職員の方からその存在を教えていただき案内をしていただきました。廃校となった泉原小学校の校舎を展示スペース、蚕具収蔵スペースとして活用しています。その収蔵品の物量、質に驚き、訪問しただけでは目にすることのできない「蚕都梁川」の歴史の重み、文化の重みを目の当たりにすることとなりました。
正直なところ、現地に赴くまで情報の収集が意外に難しかったことを申し添えておきます。現地でパンフ類などを入手したことにより、さらに次のような蚕糸業遺産群、関連施設があることを知りました。
<新たに知ったもの> ★福島市民家園 旧小野家(養蚕農家、伊達町から移築)、旧広瀬座(梁川町から移築、芝居小屋) ★おりもの展示館・からりこ館(伊達郡川俣町) ★種繭標本(伊達市伏黒の藤屋)等、蚕糸業に関わる文化財多数
情報化が進展した今日でもなお、これだけ情報が共有されていないことは一体どういうことだろうかと思います。そのつもりで情報を引きずり出していけるはずなのですが、私の情報把握力の非力さを感じました。おそらく殆どの人が私同様に本当に必要とする情報にアクセスできていないのではないかとの疑問を抱きます。21世紀にふさわしい知識基盤社会の実現を切に望みたいものです。
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