第二次世界大戦後の1948(昭和23)年に制定された農業改良助長法に基づき、農民が農業及び生活に関する科学的・実用的な技術・知識を取得し、それを普及し有効に活用できるように都道府県が農林省と協同して実施した事業を生活改善普及事業という。この事業を進めるために都道府県は地区ごとに普及事務所を設置、農業改良普及員(男性)と生活改良普及員(女性)を置いた。この事業はアメリカに倣い、男性に対する農業改良、女性に対する生活改善、若者に対する青少年育成(4H活動)の3つの枠組みで推進された。
このページ「農業普及 生活改善」では、生活改良普及員によって支えられた「女性に対する生活改善」を中心に紹介する。
農村は生産の場であると同時に生活の場であったが、当時生産面が優先されていた。農家の主婦は農業、家事育児、地域の活動に疲労困憊し身体をこわす程であったが、他の生活を知らない彼女たちはそれを普通のことだと考えていたのである。そこで、生産と生活は対等関係にあって生活向上が生産活動の向上に結びつくという考えから農村女性に生活改善普及事業の焦点が当てられた。家政学の知識を身につけた生活改良普及員は地域に密着し、知識や技術を伝達するだけではなく、農村女性自らが生活改善の必要性を認識するように働きかけ、実際に生活を改善する場面では普及員が持つ科学的に裏付けされた知識・技術を地域で受け入れやすい形に置き換えて改善・手助けを行った。生活改良普及員は、すでに農村に人脈を持っていた農業改良普及員や保健婦と協力すると共に、すでに農村にあった婦人会などのグループ組織も活用しており、それらは「生活改善グループ」と呼ばれた。生活改善の内容は「衣」「食」「住」「家庭管理」に大別されていた。
参考資料 服部朋子 「生活改良普及員の機能を考える −日本の第二次世界大戦後の生活改善運動から−」 太田美帆 「生活改良普及員に学ぶファシリテーターのあり方 −戦後日本の経験からの教訓−」
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