上田市指定文化財 鴻の巣 上田市文化財保護条例第5条の規定により左記のとおり指定します。 記 1、種別及び名称 名勝 鴻の巣 1、所在地 上田市大字富士山字上原守沢1959-1番地 1、所有者 上田市 1、指定年月 平成10年11月18日
今からおよそ2000万年前から500万年前の新生代第三紀中新世という 時代、このあたり一帯はフォッサ・マグナと呼ばれる海域で、海底には、溶岩や 小石・砂・泥などが積って厚い地層をつくりました。鴻の巣の岩石は、そのうちの 約1300万年前から950万年前にかけて堆積した礫岩と砂岩で、「青木層」と 呼ばれる地層の一部分です。 鴻の巣の地層は、地殻変動によって長い年月をかけて海底から隆起するときに 圧し曲げられ、北側に40度から60度ほど傾斜しています。崖に見られる茶色の 横縞模様は、隆起後に地層の境目に浸みこんだ鉄分の色です。砂岩層には、 木の葉の化石も見られます。 礫はおもにチャートという岩石です。他に黒色の粘板岩や硬砂岩、白っぽい 流紋岩、それに緑色凝灰岩などがあります。純粋なチャートは白色ですが、 不純物が混ざった灰色・緑色・褐色など様々な色のものがあります。 チャートや粘板岩は、上田小県地方にはない岩石ですので、佐久山地や 赤石山脈方面から運ばれたものと考えられます。また、緑色凝灰岩は、太郎山や 独鈷山地域の岩石で、それが礫として入っていることから、当時これらの山の 一部は陸地になっていたことがわかります。 鴻の巣の崖は、幅が東西およそ190m、高さが最高約60mで、堆積岩の 崖としては上田市では最大です。崖のすぐ下を流れる鴻の巣川の浸食によって、 地層が削り取られてできたものです。礫や砂は水を含みやすくもろいので、 絶えず少しずつ崩れ落ちています。 鴻の巣の名称の由来は、昔、雁の一種の鴻(ヒシクイ)か鶴の仲間の鸛 (コウノトリ)が営巣した場所と伝えられていますが、確かなことはわかりません。 保存上の注意 ●崖の上や谷間には、みだりに入らないこと。 ●土砂の採掘や採取を禁ずる。 ●植生環境の保全に努めること。 平成11年3月 上田市教育委員会
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