上田市指定文化財「笠原工業常田館製糸場」
笠原工業の製糸場時代の歴史的建造物群が同社の敷地内に豊かに存在していることを意識したのは、JR長野新幹線の窓から眺めた風景からでした。私が意識的に新幹線の窓越しにその風景をデジカメで最初に捉えたのが2007/06/03。その後も機会あるごとに新幹線の窓越しに笠原工業の景観を記録しておきました。
笠原工業の5階建繭倉等は経済産業省による「近代化産業遺産認定リスト」にも選定された他、製糸場時代の建造物群15件が2010/2/17、上田市指定文化財となりました。日本の近現代を支えた製糸業の工場等の建造物がセットで現存する例は、富岡製糸場の他には、笠原工業常田館製糸場しかありません。富岡製糸場が官営であったのに対し、常田館製糸場は民間の製糸場の代表例としてセットで現存する唯一のものです。
これらの建造物は、2008年の道路拡幅により、道路に面した4階建繭倉、倉庫、風呂場・食堂棟、炊事場が曳き家され、工場移転により中央部の工場の建物は取り壊され、5階建繭倉の東側にあった繭乾燥室2棟も取り壊されました。
これらの歴史的建造物群は、2008年の道路拡幅を機に取り壊される予定でしたが、近代化産業遺産としての評価を受け、所有者である笠原工業によって曳き家などの方法により保全されることとなりました。日本の近代化を支えた製糸場の文化遺産を未来永劫に残していきたいものです。 (前川)
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