★小津安二郎『東京物語』 by Moment String Quartet (cover) https://youtu.be/wTrD2ZKf4Iw
小津安二郎の映画が世界的に極めて高い評価を受けていることに驚嘆し、また、そのように国を超え、世代を超えて真に優れた映画が評価される時代になったことに感慨を禁じえません。
映画音楽とはかつては、思い出の名画のサントラ盤レコードを聴いて懐かしむというものでした。しかも日本映画が映画音楽の鑑賞の対象になるというのはかつては考えられなかった事。
それがここにきてある種の異変が起きてきました。それが小津映画音楽の楽譜の出版とコンサート開催。ある意味極めてマニアックなものなので大々的に、というものではありませんが、細く長く、というスパンで毎年小津映画のコンサートが開かれるようになってきたということ自体が驚きです。
Moment SQのこの演奏は、オリジナルスコアを基にカルテット用に編曲したもの。映画音楽と言えばサントラ盤をありがたく聴くしかなかった時代を思うと、固定しきったサントラとは違う、演奏者の個性が加わった生演奏で聴くことができる。このことだけでも感動的です。
『東京物語』は映画専門誌"Sight and Sound"が10年に1回選ぶ世界映画史上の名作の中で驚くことに第1位に選ばれた作品です。第1位というのはオリンピックの金メダルなどとは全く裾野や基準が違う。あらゆる世界の映画史上でその最高峰に位置する作品ということです。並外れた評価の高さであることがおわかりいただけるでしょう。
作曲家の斎藤高順さんは、この『東京物語』が作品デビューになるらしい。このことも驚くべきことです。
今こうやって生演奏で聴いても鑑賞に耐える作品、という点、実に微笑ましい。これを機会に、映画音楽を生演奏で聴いたり、自分たちで演奏して楽しむという文化が広がるといいな、と思います。
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