これはもう、映画史上の…というみみっちい括りを超え、世界遺産に指定したいぐらいの作品です。
ジャン・ルノワールの映画の中で、特によかった映画を挙げると、筆頭がこの「ゲームの規則」。他には「ピクニック」「素晴らしき放浪者」あたりかな? 「大いなる幻影」の評価も高いのですが、「ゲーム」とどちらがいいか、と言われたら迷わず「ゲーム」を選びます。ヒューマニズムの表現という点でも「ゲーム」が勝ります。
登場人物たちが室内を入り乱れながら、ドラマが進行し、人間関係を描きつつ筋書き(プロット)を進行させていく室内ドラマ。この手さばき方が非凡。空間的な深さとカメラワーク、部屋間のカメラの視点の連続で、バサバサとさばいていく。ややこしい話がややこしくなく、客席からはまるで高みの見物をしているようにその状況が丸見えになってしまう。この小気味よさといったらありません。
このポリフォニック(多軸的)なドラマ構造は、オペラの○重唱に近いものです。モーツァルトの「フィガロの結婚」第2幕のフィナーレで、伯爵とフィガロ側の駆け引きが展開します。何人もの登場人物がそれぞれの思惑や状況を持って登場し、次々に局面が変わり、形勢が逆転し、てんでんばらばらの状況が○重唱によって束ねられ様式的に統一されてしまう妙味が、映画でもできることをこの映画が証明したといってもいいでしょう。
恋の駆け引きから何から何まで交錯しながら、最後には、ある登場人物の死をきっかけに、全てのことがまるでなかったかのごとくに収束してしまう顛末への収斂も見事なばかり。カメラで入り乱れる人物をビシバシさばいていく手法の必然としてドラマの結末がある。見事にドラマが映画という形式の中で引き出され昇華された作品と言っても過言ではありません。
何しろ「世界遺産」です。絶対のオススメです。
満足度★★★★★
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