シェーンベルク :月に憑かれたピエロ作品21
カテゴリ: おすすめレビュー 地域: どこか
(登録日: 2005/12/11 更新日: 2024/09/30)
1998 ユニバーサルクラシック シェーファー(クリスティーネ), メンバー・オブ・アンサンブル・アンテルコンタンポラン, ジロー(アルベール), ハルトレーベン(オットー・エーリヒ), シェーンベルク, ブーレーズ(ピエール), メーテルリンク(モーリス), ピットマン=ジェニングス(デイビッド), バイロン卿
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おすすめレビュー
「月に憑かれたピエロ」。いいなあ、この作品の表現性。歌半分、語り半分のような、無調の面白さを満喫させてくれる作品。この得がたい音体験の楽しみは、アートを超えた秀逸なエンタテイメントかもしれません。初めて「ピエロ」を聴いたのはピラルツィクの歌。恐ろしいぐらいに並外れて上手かった! 作曲以上に歌唱の表現力が勝っているような感じすらあって、ピラルツィク以後の「ピエロ」は言葉は悪いですが、どれも期待はずれというか低空飛行というか、物足りなさ過ぎ。その後遺症に悩まされたといっても過言ではありません(笑)。
ブーレーズ指揮の「月に憑かれたピエロ」のイヴォンヌ・ミントン盤は、演奏は上手くても楽しくない。ピラルツィクの歌声で聴きたいという思いが先行してしまって、どうしようもない!
このシェーファー盤は、そういう思いを少しは払拭してくれたかもしれません。それでもピラルツィクの歌唱の凄さと比べてどうか…とついつい比較する心理が働いてしまいます。ピラルツィクを凌駕できないジレンマは「ピエロ」歌いの宿命かもしれません。
シェーファー盤は演奏がいい。アンサンブル・アンテルコンタンポラン、なかなかにいいですよ。演奏に限っては過去最高! 欲を言うと少し抑え過ぎか。もっと表現力豊かな発散型でいい。歌はまずまず。ミントン盤より好感度高いです。ピラルツィクを超えられないことを諦めた上での代償的な満足、という感じは否めません。これも後遺症というものです。
ところで「リュネール」(英語だとルナティック)という感覚の妖しさというものが、この曲の尽きせぬ面白さにもなっています。「月に浮かれて出てくる」という感覚。これがどんな具合に湧き出てくるのかと思って聴き直してみると、やはりその辺りがこの曲の魅力の源泉かなぁ。シェーファー盤で改めてそういう感覚を取り戻した感じがします。ということでちょっとおススメ。
満足度★★★★☆
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