ワーグナー : 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」全曲
カテゴリ: おすすめレビュー 地域: どこか
(登録日: 2005/10/14 更新日: 2024/09/30)
1999 東芝EMI カラヤン(ヘルベルト・フォン), ドレスデン国立管弦楽団, ワーグナー, アダム(テオ), リッダーブッシュ(カール), ビュヒナー(エーベルハルト), ルノフ(ホルスト), エヴァンス(ジェレイト), ドレスデン国立歌劇場合唱団, ライプツィヒ放送合唱団
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おすすめレビュー
ワーグナーが大好きになったきっかけがいくつかあります。「マイスタージンガー」をオペラ映画で見て、あまりに分厚い音の細部が聴き取れず欲求不満になったこと。ブーレーズの「第1幕への前奏曲」を聴いて、対位法的な構造を実感したこと。いずれにしても「マイスタージンガー」がトリガーです。
…にもかかわらず、「マイスタージンガー」の問題は、極めつけと言える名盤が稀有なこと。おそらく昔も今もこのカラヤン盤以外にないのではないでしょうか。バイロイトのライブ録音でもあまりいいのがない。またこの作品に限っては、よりによってブーレーズ盤がない。正直なところ、あまりカラヤンが好みでない者としてこれを選ぶことに抵抗感があったのは確かです。ただ、歌い手たちの顔ぶれ、カラヤン+ドレスデンという組み合わせだったら、悪いわけないでしょう。若き日のカラヤンがバイロイトでマイスタージンガーを指揮したとても珍しい録音があります。前奏曲を聴いただけですが。その演奏はかなり強引に盛り上げて突っ走っていた。それに比べると丸みを帯びたというのか、成熟したというのか、味わいの深い、質の高い演奏です。カラヤンでも一番目に挙げたいぐらいの名演です。
マイスタージンガーで好きな個所はいくつもあります。 ●第1幕への前奏曲 これが終わることなく、教会の場面のコラールへと移行します。前奏曲単品の演奏が擦り込まれているせいか、場面移行するのは不思議に感動的。 ●第1幕の最後 ベックメッサーが騒ぎ始め、親方たちがてんでんばらばらのことを言い始めたまま終わる。ああ、これが○重唱の面白さなのだとわかった。 ●ハンス・ザックスのモノローグ 渋くて実にいい。ワーグナーの音楽がここまで深く内面を表現し、気品を持ったかと思うほどの感銘深い曲。 ●第3幕の前半の重唱 ザックスがエヴァの靴を直してあげる場面の5重唱(だったか)は実にいい。この場面が白眉でしょう。 ●第3幕の最後の歌合戦 もう盛り上げるだけ盛り上げる。この迫力には誰も抗することができないぐらい。バッカスの力があります。ヒットラーがプロパガンダに使ったの、よくわかる。
いくら何でも4時間半というのはあまりに長すぎ。それで昔これを抜粋して90分のMyバージョンを編集したことがあります。割といいとこ取りしたつもりでも90分にもなってしまう。この作品の充実度を推し量ることができようというものです。
満足度★★★★★
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