地域の活性化には、「よそ者・わか者・ばか者」が必要と言われています。この三拍子が揃うのがまさに大学です。21世紀の大学は地域に開かれ、地域に利用していただくことで、地域づくりと人材育成が推進されていきます。
これまで地域の情報発信は、第三者(例えばテレビ局の番組制作者)がそこに行って取材し番組を作るものでした。しかし、誰もが情報発信できるインターネットの時代、情報発信の主役はもはやマスコミではなく地域の住民なのです。自分たちで自分たちの地域を面白いと感じ、自分たちの目線でそれを伝えていってこそ、その地域は光輝いていきます。他者が取材をしてもその輝きは生まれにくいのです。この輝かせ方が地域づくりに他なりません。
4年前、長野大学に赴任して以来、私の中で熟成されてきた上田のイメージは、蚕糸業のイメージです。長野新幹線に乗って上田を発ち、車窓の外を眺めていると、すぐ目の前に現れてくるのが笠原工業の繭倉(木造5階建)です。新幹線の座席は、工場の施設全体を俯瞰するのに最適な観客席と言ってもよいぐらい、その存在感を実感することができます。これだけの規模の歴史的建造物が上田の中心市街地に残されていることを知ったことが、やがて感動へ、上田のまちの再認識へと変わり、さらに「蚕都上田プロジェクト」へと発展しました。
蚕都上田プロジェクトは、市民・行政・大学などが一緒になって、「蚕都」をキーワードとして地域づくりを進める緩やかなネットワーク型コミュニティです。皆で一丸となって大きな目標に向かって邁進するものではなく、逆に、参加者がそれぞれの興味関心を持ち寄り、共鳴しあって、そこに新たな認識の深まりが生まれる、分野横断の連携が生まれる、といった自発的・自律的な活動の縫合を目指しています。
蚕都上田プロジェクトは、学生たちにとっても、地域に出向いて地域の課題や情報発信を学び実践するまたとないチャンスになっています。学生がスタッフとなりケーブルテレビで放送する番組を制作しました。
平成21年度は「日本シルクロードものがたり」「蚕都上田90周年記念事業『蚕都上田お宝発見』」をアクションプランとし、地域の皆さんと学生・教員が一緒になりながら、楽しめる地域活動にしていきたいと考えています。
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