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「クラシックの迷宮」で端山貢明作品を聴く

カテゴリ: 雑記 地域: その他
(登録日: 2024/09/22 更新日: 2024/09/30)

「クラシックの迷宮」放送2024/09/21


クラシックの迷宮:
端山貢明の音楽〜NHKのアーカイブスから〜(2024/09/21(土)19:25〜21:00放送)
MC:片山杜秀氏

以下の楽曲一覧は上記サイトから転載

楽曲一覧
交響曲「象形」
若杉弘(指揮) 、NHK交響楽団(管弦楽) 、NHK電子音楽スタジオ 、岸田今日子(語り) 、影万里江(語り) 、山本学(語り) 、水島弘(語り)
作曲: 端山貢明
(26分30秒)
<〜NHKのアーカイブスから〜 >
打楽器群とオーケストラのための協奏曲
若杉弘(指揮) 、NHK交響楽団(管弦楽)
作曲: 端山貢明
(19分14秒)
<〜NHKのアーカイブスから〜 >
ピアノとオーケストラのための「交響的変容」
小林仁(ピアノ) 、森正(指揮) 、NHK交響楽団(管弦楽)
作曲: 端山貢明
(17分3秒)
<〜NHKのアーカイブスから〜 >
6人の打楽器奏者とオーケストラのための「道」
森正(指揮) 、NHK交響楽団(管弦楽)
作曲: 端山貢明
(18分20秒)
<〜NHKのアーカイブスから〜 >
 

雑感1:思索の伝道師


端山貢明作曲の作品がコンサート、放送等で紹介される機会は殆どありませんでした。今回の「クラシックの迷宮」の端山貢明特集は、もしかするとここ数十年で初めての機会ではないかと思います。

日本を代表する作曲家の一人でありながら、1970年代後半以来、作曲活動から離れ、それと共に作曲家として知られなくなって久しくなっていました。

「クラシックの迷宮」で採り上げられた作品は上記の4曲。これらには共通した傾向があります。ピアノも含む打楽器が多いこと。ここで採り上げられた作品に限りません。代表作「ピアノソナタ」もピアノ独奏曲です。音楽の表現に情緒性は殆どなく、打音を刻む打楽器が理詰めの作曲法に適していたのだろうと思います。力強くはあるけれども、心に響いてくるところがあまりありません。ピエール・ブーレーズにかなり近い。理詰めでぐいぐい進めるけれども、心に響かない。1950〜60年代に活躍したブーレーズは次第に作品の数が少なくなり、指揮活動が多くなり、IRCAMの所長をつとめるなど、作曲活動とは距離を置くようになりました。端山さんが非常に似た傾向を示しています。

この番組で4曲を聴き、ふと思いを転じた先が、1990〜2000年代、ケーブルテレビ山形の番組に出演した「トーク番組」における原理論の語りとのギャップです。下記の記事は、1998年、地方分権について自身の考えを吐露したコメントの採録。6人の市会議員の発言を受けて「地方分権」とはいかなる原理のものであるかを10分近くにわたり論じています。しかも、論理的に思索された考えがよどみなく語られています。思索の伝道師と言っても過言ではありません。はしなくもそれが山形でのトーク番組に記録されています。

端山貢明発言録(1998/10) 地方分権:個の権利を実現する社会システムの実現が焦眉の急

端山さんは自身の思索を、言語、そして発話行為により生き生きと表現しています。発話内容をテキスト化しても修正の必要がないほどに言葉が正確である点、理路整然とした論理構成となっている点に人格的な個性、言語による表現の深さがあります。端山さんは作曲で同様の表現を行っていたのではないか。作曲から転じ、メディア論、ソシアルダイナミクスの探究に転じたのは故ある経過ではなかったかと思います。それにしても生前の間、作曲活動の業績を自身が封印してしまったことが惜しまれます。
 

雑感2:北山杜秀さんの解説に関して


北山杜秀さんは端山貢明の業績、作品をどう捉え、評価しているのか。「クラシックの迷宮」で何よりも関心のあったのはこの点です。

端山さんの考え方、思想は大川信さんとの対談記事を踏まえています。生涯と業績を大きく作曲活動(ビフォー)、メディアとソシアルダイナミクス(社会動学)の研究活動(アフター)と分けると、言及されているのはビフォーの範囲。端山さんが作曲活動以後、どのような方向に移っていったかを次のようにまとめています。

「世界の混沌をありのあまに受け入れつつ、ミニマムにコーディネートしたいというところがあって、それには個人で作曲するよりも、世界の流動する一つの大きな場所としての電脳空間で活用できるようなツールを開発した方がいい。混沌の果てに交響曲「象形」のようなディスコミュニケーションと滅亡が来るのではなくて、社会も人間も変容して更新されて、もの見合いで楽しく生きていける自由な環境を電脳空間の上に作っていくんだ。個人の作品ではなくて、みんなの場をつくるんだ、という方に端山さんの関心は移っていったわけです。」(ほぼ発言どおりに採録)

なるほど、北山さんの言葉で端山さんがその後目指したソシアルダイナミクスを北山さんの視座、言葉で言うとそうなるのだな、と合点しました。
 
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