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OMF2018/ジャンニ・スキッキ 2018/09/01

カテゴリ: サイトウ・キネン・フェスティバル松本 地域: 長野県
(登録日: 2018/09/02 更新日: 2024/09/30)


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記録日: 2018/09/01

小澤征爾音楽塾オーケストラによるOMFオペラ
プッチーニ:「ジャンニ・スキッキ」
日程
 

雑記帳


9/1、OMF(セイジ・オザワ松本フェスティバル)2018のオペラ公演『ジャンニ・スキッキ』を聴きに行きました。

SKF(サイトウ・キネン・フェスティバル)の時代からSKF/OMFはオーケストラコンサートとオペラ公演を両輪に開催してきました。毎回のオペラ公演はSKF/OMFの一番の楽しみです。ここ数年、オペラの意欲的な公演がなく、寂しさを感じていました。今年はそうしたメインプログラムとしてのオペラ公演ではなく、1日だけの公演。実質50分という短い上演時間。オーケストラがサイトウ・キネン・オーケストラではなく、小澤征爾音楽塾オーケストラです。これまでの寂しさを補って余りある魅力的な上演でした。

この日、満席になるほど多くの観客が訪れていた状況が印象的でした。以前のSKF/OMFのオペラ公演と違い、家族連れで気楽に来ることができるように演目の選択、入場料の設定(子ども半額)がされていることも気が利いていました。家族連れでオペラを楽しむ文化の発信がされたことは、OMFにとっても大きな手応えではないでしょうか。

私の席はステージから13列目の中央。こんな特等席のようないい席でオペラを鑑賞できるのは至福の喜びです。値段が8000円です。通常のオペラ公演に比べると格段に安い。

上演に際しては面白い仕掛けがありました。オーケストラピットにオーケストラの楽員が入場しないまま開演時間に。なぜかオーケストラ席が客席と同じ高さになっています。なぜかな? 客席の袖からトランペットの演奏者が出てきていきなり『レイダーズ・マーチ』を手短に演奏しました。青少年やクラシックに馴染みのないお客さんにオーケストラの編成楽器を紹介する趣向で、金管・木管・弦楽器・打楽器のそれぞれをそれぞれの演奏者が楽器の紹介をしてピットの席に着くという趣向。このイベントが約10分。いきなりの楽しいイベントでした。音楽塾の演奏者たちは皆が若者です。楽器ごとの趣向や選曲が楽しく、音楽を聴き手と一緒に楽しむという雰囲気醸成にも一役買いました。未来を担う若手演奏者を育てる場としての音楽塾にも小澤征爾さんのミッションを感じ、共感するところが大きい。故・斎藤秀雄氏が戦後に始めて桐朋学園の創設へと発展した「子供のための音楽教室」は、この音楽塾と同じ若手音楽家の育成という大きな使命を担っていたものと思います。音楽文化の創造・普及は人材育成から。その点で音楽塾オーケストラに限りない魅力を感じます。

演奏者が全員ピットに収まった段階でピットが機械仕掛けで下降して本来のピットの低位置に。こういうステージの仕掛けの「見える化」も面白い趣向です。そう言えば、国立劇場の歌舞伎鑑賞教室も青少年向けにこういうアトラクションを演目の前段でやっていました。クラシック音楽の面白さを共有するためのグッドアイデアでした。

『ジャンニ・スキッキ』は上演時間は50分ほどの短編オペラです。『ラ・ボエーム』『蝶々夫人』など代表作が多いプッチーニの作品の中ではめずらしく短い。小気味いい短編という形容がピッタリします。『道化師』『カヴァレリア・ルスティカーナ』など短いオペラの作品はいくつもありますが、これもそういう短編の一つです。SKF/OMFでは、これまでも短編オペラの2本立てというプログラムがありました。『中国の不思議な役人(バレエ)』と『青ひげ公の城』 の2本立てが2011年、『こどもと魔法』『スペインの時』の2本立てが2013年。これらの公演は、SKF/OMFのメインプログラムであることが意識されているため、長編オペラと同じ料金となっていました。今回のように短編オペラをより低価格で鑑賞できる公演にし、子ども料金(小学生〜高校生)を半額設定したのは新機軸です。クラシック音楽やオペラの啓発を図るという趣旨からも望ましい試みです。たった1回だけの公演というのが惜しまれます。

『ジャンニ・スキッキ』は、今年2018年、NHK BSで映画監督ウディ・アレンの演出による上演が放送されました。悪くはないけれども、人間喜劇のこの演目の演出としては渋いものでした。それに比べると、今回のOMFの演出は見て楽しめるというもの。演出家がメトロポリタン歌劇場の演出家・デイヴィッド・ニース氏です。『ファウストの劫罰』など、私がこれまでSKF/OMFで観たオペラ公演をいくつも手掛けている方。演出がこなれていて違和感なくとてもいい。

何と言っても聴きどころ・聴かせどころは主人公のジャンニ・スキッキです。スキッキ役のロベルト・ディ・カンディア氏の演技力が素晴らしい。破天荒なペテン師的人物像に描かれているイタリア人臭さはイタリア人でなければ出せない、と文句なしに納得しました。この役柄は頑張って演じるものではありません。

一番の聴かせどころはあまりにも有名なアリア「私のお父さん」です。スキッキの娘ラウレッタがある一族の遺産相続をめぐるどさくさの中でフィアンセと結婚することを父親に請う場面で歌われます。遺産相続をめぐる話の展開の中で、やや唐突にこのアリアが挿入されます。人生にとって大切なものは金銭より愛、というドラマのメッセージが吐露されています。ドラマの流れをやや中断して愛を吐露するこのアリアの存在感は、その違和感を圧して余りあります。素晴らしい!

来年以降のOMFでも、このような小気味よい小品のオペラをできることなら毎年観てみたいものです。
 

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(3件)
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おらほねっと/ミッチーのブログから転載
OMF2018/ふれあいコンサートIIIを聴く
2018年09月02日(日)
https://sns.orahonet.jp/blog/blog.php?key=16888

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