江戸東京博物館で常設展示の他、特別展「明治のこころ モースが見た庶民のくらし」を見学しました。
エドワード・モースと言えば、何と言っても大森貝塚の発見者としてよく知られています。私も以前、縁あって大森貝塚の跡地にほど近いところに通勤していたことがあります。そういった経験はなくても、歴史教科書には必ずモースの名前は記載されているので、名前だけでも記憶のある人は多いはずです。
私は以前、モースが撮影した明治の日本の写真集を購入したことがあります。モースは知的好奇心が旺盛で、スケールの大きな博物学者であったと言っていいでしょう。岡倉天心が師事したフェロノサが日本に来たのも、モースの存在があったからに他なりません。日本文化のプロモーターを遡っていくと最後に行き着くのがモースです。
「明治のこころ」展は見始めたら面白くてやめられなくなるぐらいに展示品の一つ一つにはまってしまいました。生活の道具を初め、商品として売られていたものなども数多く展示されていました。モースは物品を収集しただけではなく、それがどのように使われていたのか、どのような文化的意味を持つものであるのかなどを子細にスケッチし文章でも記録しています。これらの記録も極めて貴重なものです。明治の生活が手に取るようによくわかりました。
明治時代に売られていた商品の現物は極めて稀少です。ブリキ缶に入った海苔、ガラス瓶に入ったイナゴの佃煮、瓶入りの金平糖など。竹で精巧に作られたトンボ、バッタの形をした花生けも面白い。日本人が自然の形象を正確に模倣し再現する観察力や器用さをモースは讃嘆しています。見方を変えれば、モースはまさに「Cool Japan」に魅せられてしまったのだと言えるでしょう。今も昔も変わらない日本人のこうした文化的特性、クリエイティビティが文化や形状は全く異なってしまっても、日本人に脈々と豊かに受け継がれていたものであることを、モースコレクションというタイムカプセルから知ることができます。Cool Japanの発見のルーツがここにある、という印象です。
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