教育と地域の情報化を考えるシンポジウム
基調パネルディスカッションの発表原稿
日時:2001年11月10日(土)/会場:天童温泉・紅葉苑
前川 道博(東北芸術工科大学/PopCornワーキンググループ)
1. 「何をしたいの」症候群
ITが普及する一方で、ITがなかなか活用されるに至らない現実的な問題が立ちはだかっています。その背景には、「パソコンを何に使うの?」、「インターネットで何するの?」という問いになって現れる「何をしたいの」症候群があります。
受け身的な教科型教育、情報を一方的に受け取るだけのメディア環境、消費型・時間浪費型の娯楽文化、個性や個人の主張を出しにくい社会風土など、私たちはこうした環境の中で、知らず知らず受動的な習慣を身に付け、社会全体で「何をしたいの」症候群に陥ってきました。
2. PopCornって美味しいの?
Webサイトの制作にはとても手間がかかります。画像などが多いとさらに大変です。最初からしっかり作ろうとすると誰でも挫折します。Multimedia Mapping/生涯学習支援ツール「PopCorn」は、画像を整理する前にWebサイトを自動生成し、学習プロセスの深化に応じて際限なくサイトを更新し続けることができるツールです。
ポップコーンの原料(アイデアや素材)を畑(パソコン)で育てるのは大変ですが、収穫された粒々のコーン(素材の一つ一つ)をフライパン(PopCornというツール)で煎るとあっという間においしいポップコーン(Webサイト)が出来てしまいます。
このPopCornを誰もが利用できるようにするため、第二のツール「PushCorn」を試作しました。こうした平易なユーザインタフェースがあると、子どもからお年寄りまで誰もがWebサイトの制作を楽しむことができることは、利用実験でも検証されています。
3. PopCornプロジェクト・スタート
PopCornプロジェクトは、2001年5月にスタートした若葉マークの情報化推進プロジェクトです。「PopCorn」「PushCorn」などのツールをオープンソースにして協働で開発し、また、個人の活動やコミュニティ形成支援ツールとして、さまざまな「学習」(広い意味での学び)に役立ててもらおうという、開発者・ユーザ一体型のプロジェクトです。現在、産学連携研究萌芽育成事業(山形県企業振興公社)、地学連携研究活動支援事業(東北芸術工科大学)の支援を得て進めています。
4. 「楽しく協働学習」しよう!
IT活用を阻む壁、それは「何をしたいの」症候群に尽きています。IT(手段)と人それぞれの目的、この二つが遊離しているところにまずは乗り越えるべき課題があります。
実はその解決はとてもやさしい、といささか楽観的な見方をしています。ITやネットワークと聞くと、ついつい「難しい」という先入観を持ってしまいます。しかし、ちょっとした知恵と道具(PushCornがあれば強力?)、そして皆の協力で、こうした壁は乗り越えることができます。その発想の一つが「楽しく協働学習しよう」です。
軽くウォーキングしながら、見聞したことをカメラで捉えたり、趣味を大いに楽しんでそれを皆に情報として伝えたり、旅の感興を伝えたり、といったことから気楽に何か始めてみましょう。
PopCornプロジェクトでは、「PushCorn」をリニューアルするのに伴い、「楽しく協働学習」支援プロジェクトを始めました。これを一つの取っ掛かりとして、個人・家庭・学校・市民グループ・地域社会が一つになる可能性を現実のものにしていきたいと考えています。
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